優しい人
Lucy
ガラスのように光るその蛇は
青草の影を躰に映し
すべらかに移動していた
怖くはなかった
わたしを無視して
まっすぐ母屋に向かっていくので
なんとか向きを変えさせようと
木の枝で
行く手の地面を叩くなどしても
意に介さず
速度を上げて進んでいく
そっちへいったらだめなどと
無意味に話しかけたりしながら
小走りに並んでいったが
蛇のほうが一足早く
するすると降りて行った庭先に
デレッキを手にした叔父が
待ち構えていて
それを振り回すこともなく
静かに一撃で仕留めた
一瞬体をくねらせようとしたが
そのまま動かなくなった
叔父は蛇の急所を知っていて
それは後頭部(首の付け根)
少しも苦しませずに
死なせた
「母屋に入ったら大変だからね」と、
つぶやくように言って
退治した蛇を
デレッキにぶら下げて
さっき私と蛇が来たほうの藪へ
歩いて捨てに行くのだった