小さな鈴
ただのみきや

まだ強い日差しを俯く花のように
白い帽子で受けながら
歩道の向こう
小柄な婦人が歩いている
ゆれるバッグの中で
小さな鈴が歌っている
――しゃらん しゃららん

たったひとりの歩調リズム
幅広で平らな靴の
乾いた軽い足音に
少しずらして 
被さるように
――しゃらん しゃららん

鍵か 御守りか
それとも財布か
失くしてはいけない
なにか大事なものに結ばれて
暗いバッグの中で
「ここに在るぞ」そう鳴くように
――しゃらん しゃららん

歌も詩も 
小さな鈴の泣き笑い
本当に大事な言葉にできない
なにかと結ばれて
失くさないよう
見失わないよう
心の闇から聞こえて来る
たったひとりの生の歩調リズム
少し遅れて
被さるように



           《小さな鈴:2017年8月26日》








自由詩 小さな鈴 Copyright ただのみきや 2017-08-26 19:01:32
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