晩夏断片
塔野夏子

見上げる額に北十字星から血が滴ってくる真夜中

      *

少年をひとり折りたたんでポケットに入れておく

      *

君がいくつもの遊星でお手玉をするから僕は眠れない

      *

午後の虚無の中心へと正確に雨が降る

      *

何度脱皮しても消えないカムパネルラの輪郭幻影

      *

街はずれの店で詩人が量り売りされている

      *

きららかな憂鬱と幽かな劣情との妙なるダンス

      *

百日紅の逆光は君の肌に一番似合う刺青

      *

夏にしかない遠さ(何処へ――)がしずかに息絶えてゆく




自由詩 晩夏断片 Copyright 塔野夏子 2017-08-23 10:00:28
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