夏の終わりに
そらの珊瑚

夜明けのこない夜はないさ
あなたがぽつりいう


懐かしい歌が
あの頃の私を連れてきた
そして今の私が唄うのを
遠い窓枠にもたれて
聞くともなく聞いている
夜のはてない深さと距離をまだ
知らなかった頃の私
この夜にだって
いつか明けることが
あらかじめ用意してあることを
用意してあったことを
歌っていたけれど知らなかった私が

始まりに終わりは
あらかじめ用意されている
そして
終わりは始まりへの
たどり着くだけで開く扉
瑠璃色の地球の片隅で
宇宙に向かって咲いた朝顔の
パラボナアンテナも
おおかた昼過ぎには閉じてしまうけれど
微弱電波は誰かが受け止めて
季節が廻れば種から始まる

夏がもうすぐ閉じるということを
風も
ひぐらしも
知っていて
唄う
夜明け
命の在り処はこんなにも
耳の奥で透きとおってゆく

 


自由詩 夏の終わりに Copyright そらの珊瑚 2017-08-21 11:03:14
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