二十二歳
蓮上平晃

いよいよ何かにならぬときが来て

期待していたような、羽もつのも爪も牙も生えなかった

自ら首を括った同い年の匂いが残る面接会場で
信楽狸とおじぎ福助と招き猫に
頭の先からつま先まで嘗めるように査定された

帰りの電車を駅のホームで待っていると、大きな大きな百足が線路を這ってきて
前に並んでいたスーツを着た同い年を数人さらっていった

大人になりきれない人間が何人いなくなろうと
大人になれた人間が何人いなくなろうと
たいして差はなかった

道を歩いている五十代くらいのおばさんに、
とてもスカートの丈が短い女子高生の制服を着させた 

それを見てマスターベーションをした、
自分の中の何もかもが流れ出し、からだが溶けてどろどろになった


二十二歳よ、誰もが羨む若さを持ちながら、一体何に嘆く必要があるか

二十二歳よ、かつては人間だった無機質な者たちの、命宿らぬ瞳に、何を怯える必要があるか

二十二歳よ、病魔、天災、人災が、常に空の隙間からお前の瑞々しい体を狙っているのを忘れるな

二十二歳よ、どうか誰よりも、健やかで、安らかであれ


自由詩 二十二歳 Copyright 蓮上平晃 2017-08-18 01:55:02
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