真夏の夜の夢の手前
ただのみきや

キーボードの上で
テントウムシが触覚おぐしを直している
ENTERの右の
7HOMEと8←との間
溝にハマった姿勢だが
寛いでいるようにしか見えない

どこから とか
いつの間に とか
いいじゃないの野暮なことは
八月の夜なんだから


もう二時間近く
キー四つ分の十字路をのろのろと
今から越冬準備なら感心だが
実際住まれちゃ邪魔くさい
灯りを消すとすぐ
我慢できずに画面へ飛びついた


逆光にシルエット
たたみ切れずにはみ出したマント
星の入れ墨いくら背負っても
光が恋しいか お天道さんよ


妻は夜勤でいない
テントウムシとワタクシ
真夜中の怪談動画
ブルーライトの閃きに
そこはかとなく
線香の香り

どこから とか
いつの間に とか
いいじゃないの野暮なことは
八月の夜なんだから





            《真夏の夜の夢の手前:2017年8月11日》










自由詩 真夏の夜の夢の手前 Copyright ただのみきや 2017-08-12 18:30:17
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