あいつ
星丘涙

あいつは美しかった
おれの心を奪いはなさなかった

ときに空たかく突きあげ
太陽すら飲みつくし
あらあらしく叫んだ

あいつは本当にいいやつだった
優しいやつだった

おれはあいつに惚れていた
はじめての恋人だった

あいつのふところはとても深く
すべてを包み込み
傷ついた心もいやしてくれた

あいつはきらきらと輝き
おれの心までうつしてくれた

よるは優しくこもりうたを唄い
やすかれと囁いてくれた

たまにロマンスをかたり
せつない涙もくれた

ああ あいつに逢いたい

あいつは今ごろ誰かの夢のなか
ざあざあと
鳴いていることだろう

よせては返しながら



自由詩 あいつ Copyright 星丘涙 2017-08-10 15:47:51
notebook Home