リズム
ただのみきや

真昼の光の深層
魚のような身のこなし
リズムゆらめく角度から
乾いた鼓膜スネアくすぐるブラシ


目蓋の裏を青く引っ掻いて
一匹の夜が踊り出す
はだけた胸
地を蹴るつま先 血に染めて

あれは 何処のリズム
キューバ いや 北アフリカ


乱れる髪は鞭のよう
光のしずく千々に零れ
肌をつたう玉飾り
摘み取らないまま楽しんで

あれは ベルベルの――
いや 古い古い歌の霊


コールタールに沈んだ燕の時間
モルヒネの時間
羊の白い頭骨の時間
割れたグラスから溢れる古いメモ書きの時間


この手で絞めた感触
バザールの雑踏で振り返る
日蝕のような女
タブラとアンクレット


音のないリズムが
コインのように転がって




             《リズム:2017年8月5日》









自由詩 リズム Copyright ただのみきや 2017-08-05 20:05:31
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