疳の虫
5or6

娘が寝ている時間に帰る
娘が寝床から泣き始めた
そっとただいまを告げても届かない娘の背中をさする
暴れまくる娘
布団を縦横無尽に転がりまわる
まるでねずみ花火のようで
今にも爆発しそうで
心配になって
大丈夫かと声をかけたが娘には届かず
布団を縦横無尽に転がりまわる
仕方がないので少し離れてみると
時々腕を搔いている事に気づき
その箇所に虫刺されの薬を塗ってあげたら
おとなしくなって
寝た
疳の虫に刺されたのかと周りを見渡したが
何も見えず
聞こえるのは扇風機の音だけだった
明かりを暗くして廊下に出ると
疳の虫が目の前でニヤリとして
足をすり抜けて娘の寝床に入っていった
途端に娘の泣き声が響いた
やられた
すぐさま娘の部屋に戻り疳の虫を捕まえた
おい、貴様、娘に何をするのだ
にらみを利かして疳の虫を脅す
すると疳の虫はおしっこをもらした
きたね
手を放してしまったら疳の虫は尻もちをついた
イテテ
疳の虫は思わず声を出した
するとハッとした顔をして手で口を塞いだ
喋った!
驚いた顔で疳の虫をみたら泣きそうな顔をしてバイバイと手を振っていた
消えてく!
疳の虫の体が段々と透明になって遂には完全に消えてしまった
どうやら他人に声を聴かれたら消滅してしまうのだろう

所で娘はスヤスヤと眠りにつき
読んでいた疳の虫の本を閉じて
部屋を出た



自由詩 疳の虫 Copyright 5or6 2017-07-31 22:16:52
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