夏日
葉leaf



夏に投げ出された一冊の本が響いている
怒りでもなく哀しみでもなく喜びでもなく
ただ一冊であることの響きに満ちあふれている
本は活字の結晶として
この夏の暑気により一層硬くなる
これ以外の構造はありえなかった
その唯一の構造で輝きながら
不意の降雨が冷気をもたらし
本は光を発し始める
ふたたび夏の強い日差しを受けて
本は少し物憂げに
活字を細かく振動させて
結晶の隙間に陽射しを透過させる


自由詩 夏日 Copyright 葉leaf 2017-07-29 05:31:32
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