御使い
黒崎 水華

夜半の馨を残して
朝焼けは落ちてゆく

頬に残らなかった
昔日の跡を眺める

三面鏡の奥で波紋が広がる
優雅な尾鰭が翻る

昼下がりの葉の翳り
白昼夢に耽溺し
蝸牛が休んでいる

列んでいる足迹が
追従を許しているのか

(容易いのは絶やすことの方だろうか)

糸電話から春が産まれてくる
さわさわと柔らかな風が
前髪ばかりを揺らして

少しずつ置いてゆく
細胞を塗り替えるように

(歓びは噎ぶように綻んで)

季節外れの花が枯れるまで
光を吸収しようと目論む

荒れ果てた土地で
心の栄養を補う審美眼
鋭い第六感の皮膚を立たせて
血は眠らずに空を飛ぶ


自由詩 御使い Copyright 黒崎 水華 2017-07-28 06:05:49
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