生存権
少年(しょーや)
「なんにもできない」って君は泣きそうな顔で言う
「なんにもできない」ってため息つきながらいつも言う
「なんにもできない」って言えるのに「できない」って言う
ため息つくまで悩めるのに「できない」って言う
生きているだけでそれで良いのにな
生きたいのに「しにたい」なんてぼやいたりしてきた
不甲斐なさを形にする言葉がどこにも無くて
かろうじで見つけたその答えすら腑に落ちなくて
最後はいつも涙するくらいしか出来ないから
生きているだけでそれで良いのにな
小学五年のうちの子は何をやっても一番になれないんです。
控えめで人の嫌がることをしないでいつもニコニコしている穏やかな子なんです。
少年野球では自分から進んで投球練習や素振りをコツコツやっています。
性格がいいからか、今年はキャプテンに選ばれました。
でも、試合ではそこそこの活躍はするものの最優秀賞のような個人賞は一度も取れたことがないんです。
他の子が賞を取ると笑顔を見せて「おめでとう」なんて自分のことのように喜んであげているんです。
思えば今まで目立った成績を上げたことがないような気がします。
リレーの選手に選ばれるわけでもなく、書道の作品が入賞するようなことも一度もありません。
活躍している他の子供たちを見るとすごく羨ましいんです。
控えめだけど決して悪くはないはずなのに……
どうすればあの子は一番になることが出来るんでしょうか?
どうなればあの子の努力は報われるんでしょうか?
傍から見ているとこの子はもしかするとこのまま目立つことのないような人間になってしまうんじゃないかと思うんです。
親として私はどうしてあげればいいんでしょうか?
生きているだけでそれで良いのにな
自由詩
生存権
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少年(しょーや)
2017-07-25 20:50:00