試供品の朝
ホロウ・シカエルボク


そんな粗末な寝床にかじりついて
どんな夢を見ようというのだね
おまえは堅実に生きることで
浅ましさを手に入れている

処刑のなされた丘で放置された罪人どもの血が
土に染み込んで飲み水を汚す
もはや誰の罪か判らなくなったそれが
いつかおまえの子にひどい口をきかせるだろう

祈りの効力などない
善行の見返りなどない
だれも品性だけで幸せを勝ち取ることなど出来ない
おまえは人間を上等なものに思い過ぎている

たたかいの話をするとおまえは
おれのことを恥知らずのように言うが
げんにおまえはおれをやり込めようとして
そんなふうにいっているのではないのかね

雨のあとの路面に唾を吐くのだろう
古本屋で手に入れた詩集に落書きをするのだろう
レコードを叩き割って裏庭に捨てるのだろう
日記を塗り潰してなにも思い出せなくするつもりなのだろう

生の滓が肌にこびりつくから
おまえはいらだちに取り巻かれて
きちがいのような叫び声を上げる
いっときののぼせですむうちにやめときな

うす曇りの週末、オープンカフェで
焼けつくようなコーヒーを無暗に流し込んだ
ボサノバが流れていて、ウンザリするほどに
そうさ、おまえいがいはみんな楽しそうにしてた

妙に早い飛行機が空を横切る
どこかの金持ちのセスナかもしれない
飛行機雲が自己顕示欲を賛美してる
大きな声じゃ言えないが墜落するといい気分になるだろう

粗末な寝床にかじりついて
どんな夢を見るつもりだい
枕を覆う布は清潔なものに取り換えたかい
妙な時間に目を覚ました時に飲む飲料水は用意してあるかい?

明日も暑くなるらしいよ
みんながうんざりして
それでもすべてのことがつつがなく進行していくんだ
おまえは本当にそういったいっさいを愚かしいと感じる

だけど明日の朝もきっと
アラームが鳴る前にしっかりと目を覚ますんだ


自由詩 試供品の朝 Copyright ホロウ・シカエルボク 2017-07-21 00:51:45
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