忘我のプラトニック
ただのみきや

書き連ねたその名が
細波となって 寄せては返す
好きだ 好きだと 漏らした声
海に降る雪 静かに跡もなく


わたしは溶岩
死火山の 抜き盗られたはらわた
灰の伝道者だった
時の岬からせり出して立っていた
わたしにとって愛とは そう
ただ灰にすること


なのに いま ことばは
人肌より 冷たくて
触れるやいなや 透き通り
落涙へと 生まれ変わる
金色の夢 濁った悲しみ
すべてを忘れて


あなたのこころ
満ち引くリズム
いま ともに うねり まるで
世界の掟と刺し違えたかのよう
血みどろで溺れる落日を
映して笑い
笑って駆けて
決して越えられないあの壁に
白く砕け散る
ふたりひとつの波




          《忘我のプラトニック:2017年7月7日》








自由詩 忘我のプラトニック Copyright ただのみきや 2017-07-08 19:26:30
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