パイプの先に
藤鈴呼



ねえ何か面白いことやっているよ
えーっ 何なんだろう
一体 なんなんだろう って
私達を せめているようだ

違うよ
ちょっと 指摘しただけ

私的な問題に留意していてね
詩的な私達は 蚊帳の外だと 知っていて
ちょっと変な、なんて 修飾語を使う

飾り立てられることを 何よりも嫌う若者が
いや 若者だった筈の私達は 今は老いているのか
そんなことは置いて於いてと声がする方向を見つめると
肥え駄目
冷たい声がして 振り返る

氷を作り忘れた製氷機は ただの塊
四角い枠組みだけを 表示している

本当は カラン と 
小気味よい音を聞かせてくれる筈ですが
今 ほんのちょっと 個人的な事情により
音が 出ないんです
情事ではありません 常時でもありません

その内に また 小気味良い音が
ひっそりと 聴こえて来ますから
舞っていてね

ヒューっと 音がする
誰かが 囃し立てた二人
恋のバカンスを 楽しみます だなんて言っちゃって
真っ赤な口紅を はしたなく開いている

横一文字にするよりかは
への字にしてみたり
へらず愚痴を叩いてみたりする方がイイ

バチを逆手に持ち替えて
逆上がりしようとして握る鉄棒よりも

鉄パイプと 禁煙パイポを咥えて
ちょっと 格好付けた角度で収まるファインダー越しに
ニヒルな笑顔
ただ それだけが 似合うのです

若者たち
若者達の町
待ちくたびれた若者
その どれもから外された私達は中年
何てこと言うっちゅーねん、なんて言いながら
冷たい笑いを繰り返す

その唇に もはや赤い紅は刺さぬ
代わりにひび割れた氷ばかりが突き刺さる

あの 白い眼のように
いつか 芽になれたら良いな
例えばササユリみたいな

ウォッシュアウトしてみればいいよ
鮮やかさは荷倍増しでヨロシクね

そうしたら 桃色が浮き出るから
ちょっとだけ 得したような気分になるから
ねえ 試してみて

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自由詩 パイプの先に Copyright 藤鈴呼 2017-07-06 17:57:00
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