雨に囲まれた待合室
塔野夏子

雨に囲まれた待合室に坐っている
だいぶ長いこといる気もするし
そうでない気もする
入ってくる人もいる
出てゆく人もいる
以前もここで
待っていたことがあるような気もするし
ないような気もする
何を待っているのか
なんとなくわかっているようで
なんとなくわかっていない
ひょっとしたら単純に
雨がやむのを待っているのかもしれない
待っているそのことが出現してはじめて
それを待っていたことを知るのかもしれない
いずれにせよここは
待合室であることだけははっきりしている
ほんの小さなきっかけかもしれないし
劇的な出来事かもしれないが
とにかく何かにここから連れ出される
そのとき ここに居合わせた人に
微笑んで 席を立ってゆけることを
ぼんやりと願いながら
雨を眺めて
坐っている




自由詩 雨に囲まれた待合室 Copyright 塔野夏子 2017-06-25 11:41:55
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