目を開くと
斎藤秀雄

こころが
とても
落ち着いている。

こころが
とても
落ち着いている。

風。

両手
両足が
おもたい。

両手
両足が
おもたい。

柱時計。

柱時計。

井戸。

両手
両足が
あたたかい。

両手
両足が
あたたかい。

イメージの
中では
ぽかぽかとした原っぱで
日向ぼっこをしていて、
同時に
露天風呂に
入っている。

イメージの
中の
露天風呂に
入っていると、
両手
両足が
ぽかぽかとして、じっとりと
汗がにじんでいる。それにしても
両手
両足が
おもたい。
両手
両足が
鉄の重さで
地下深く隠された井戸

底に沈み込んでいる。

井戸の底で
おもたい両手両足
は何かを探ろうとも
しない。

こころが
とても
落ち着いている。

それでも
右手は
何かを
掴んだぞ。

これは何だ。

鍵だ。

何の鍵だろう。
目を開く。

戦争はやはり終わっていた。
悼むことをやめ、ともにあらねばならない。

     (喪の挫折リミックス集)


自由詩 目を開くと Copyright 斎藤秀雄 2017-06-23 23:23:52
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