ちり紙絡まる
藤鈴呼


山歩きが大好きだと君は言う
途中で鼻をかみたくなる程に
激しい花粉症を煩い続けても
登り続けるのが正義なのだと

中腹まで上り詰めたところで
一息いれようと振り返ったら
太い幹に揺れているチリガミ
ふわり風に乗って舞い踊る

チリシカラマルちりしからまる
ちり紙絡まるよ
面白くなって 三回唱えたら
君も肩を激しく揺らしながら 笑った

だって そうだろう?
近付けば 蝶の戸惑い
遠ざかれば ちり紙舞う光景など
そうそう あるもんじゃない
こんなに楽しい瞬間を 君と共有できたこと
それが全てだと 言い放つ

いつまでも 主張した
あれは ちり紙なのだと
その内に 鼻をかみたくなって来たのだが
目の前に花が沢山 咲き乱れていたから
笑いながら 君が言う
いっそ 鼻でも 噛んでみるかい?

味も分からないのに
毒があるかも知れないのに
そんな事には無頓着で
ただ綺麗だからと 突っ走る様子を見て
嗚呼 若いなと 呟いたんだ

君の向こうに絡まり続けるのは
ちり紙の亡霊なんじゃなく
レッキとした美しい女性なんだろう
そう思った瞬間
シャツの下にはみだしたフリルを眺め
ハテ 君は 女性が好きだったのかどうかと
更なる問題を 抱えこんでしまっていた

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自由詩 ちり紙絡まる Copyright 藤鈴呼 2017-06-14 10:24:56
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