本能か
坂本瞳子

月は見えない

普段から夜空など見もしないくせに
月の輝く夜など欲しくもないくせに
一番星などどうせ気づかない
流れ星など見ることはない

赤らんだ空に涙を乾かしてもらったことは
あったかもしれない
遠い昔のこと

心が騒ぐ
ふと窓辺に足が向く
取り憑かれたように窓を開けて
身を乗り出してまあるい白い月を
闇夜に探しては見るけれど

月は見当たらない
普段から見ないくせに

そして吠えたくなる


自由詩 本能か Copyright 坂本瞳子 2017-06-09 00:54:34
notebook Home 戻る  過去 未来