フィッシュボーン
藤鈴呼


良く見かける 昔ながらの三つ編み
黒く伸びる髪の毛の先に 
赤いリボンが はためいている
拘束された カラフル
誰しもが 似たような意見で 
流されて行く 世の中に
吐き気をもよおした

自宅に帰ると
壊れかけの冷蔵庫の扉の前で
あなたが つぶやいた
「この魚は 足が 早いからね」
その頃 運動会を控えて
日夜 もう特訓中だった わたしには
トラックと 土煙しか 浮かばなかった

修学旅行で訪れた 海の街
周りの友達は 魚介類に夢中
眺めるではなく 食べるのだ
成長期 真っ只中
景色の美しさよりも 胃袋を満たすことに
明け暮れていた
満腹の後 星空に気付ける時刻には
もう 布団の中 そんな日々

若布に昆布 そして海苔
磯の香りの象徴たちが 出迎える
この先は海
何となく 鼻先をかすめる空気感
気付けるか どうか
いつも同じ香りの中じゃあ 分からない
あの人の 強い匂ひ玉と おんなじ理論

足の速さにも 色々あって
逃げ足にばかり 定評があった友人達とは
縁を切った
切られたのか 苦い縁を 着られたものか
暫くは 思案したけれど
大丈夫 そんな慰めばかりが
我が心を 支配した風

腐りやすさにも 色々あって
サバ ブリ ゲンギョ ホッケも然り
この地を踏むまで知らなかった幻の魚は
ベランダで干すのが 旨いんです
少しずつ カタカナに埋もれた文字が
増えて行く
英字の連なる看板も 多くなった

あの魚が 塩辛いのは
下ごしらえなど 本当は 関係なく
あなたの涙が 詰まっているから
きっと そう
だから今日は 味醂に醤油で仕上げました
わたしの人生にも 彩りを
これで 少しの照りを 加えつつ
照れずに伝えられますようにと
願いを込めて

一つ 増やしてみましょうか
三つ編みの代わりに 四つ編み風に
フィッシュボーン編みと 呼ぶんです
一時期流行った 御洒落な編み方
その為に また 少しずつ
髪を伸ばして みましょうか

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自由詩 フィッシュボーン Copyright 藤鈴呼 2017-05-28 13:45:53
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