のっぺらぼうの町
AB(なかほど)

すべては上手くいくさ
と口にしながら歩き出すと
なんとなく
なんとなく
ほんとにそう思えてきて
顔をあげると
なおまっとうに歩きだせる
これが意気揚々というやつか
と笑みまで浮かんで


そこは見馴れない町並で
あわただしく動く人びとの顔が
真っ白に見えて
それでも
すべては上手くいくさと
嘯いて
いったい、ここは何処なのさ
何処を歩かされてるのさ
何を見せられてるのさ
と記憶と心臓が
ざわつきながらも
すべては上手くゆくさ
と思えてた


そうこうしているうちに
軒先や木陰のベンチで
のんびりくつろぐ人たちが見えてきて
不思議にも
その人たちの顔は
はっきりと見えた
その多くはご年配の方々で
中にはそうでない寂しげな顔もあったけど
その生き方まで見えた気がした


どうして
と少し考えて
振りかえると
せわしなく働く人たちや
登下校の子供たちの顔は
やはり真っ白で
答えがわかった気がした


だから
まだまだ僕の顔も
真っ白であればいい

願ったとたんに
のっぺらぼうの町は消えて
今年の蝉が鳴き出した







自由詩 のっぺらぼうの町 Copyright AB(なかほど) 2017-05-22 08:58:36
notebook Home