夜明駅
やまうちあつし

夜明けにだけ
列車の着く駅があるという
そこでは誰も降りないが
そこから誰か乗りこむという
言葉は置いてゆくという
言葉にはできないものを
探しにでかけるところだという
あたらしいものはふるびるという
なつかしいものはほろびるという
うす暗い空に
星が一つだけ残って
見送っているという
右手を少し上げるだけ
右目を少しつぶるだけ
ペットボトルの水が冷たい
夜明けにだけ
列車の出る駅があるという


自由詩 夜明駅 Copyright やまうちあつし 2017-05-19 17:52:12
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