滝壺
新人さん

滝壺の
ひんやりとした雰囲気が好きだ
那智の滝
赤目の滝
一人でも家族でも
友人とも
訪ねた
雪が降るような冬に
滝をみた記憶はないが
秋の紅葉の中
赤に包まれて水の
はじけてゆく音を聴いた

滝壺が
美しくすんでいるのは
その場所の水が流れているからだ
流れない場所は
すぐに汚れてしまう
それは
水も風も同じだ
その意味では
しんしんと降りしきる
雪には救いがない
彼らはかわいそうだが
降り積もると
黒く汚れていく

心の奥には
悲しみが横たわって
雪のように汚されていく
汚され続けて
形さえなくして
口からは
ため息になって出てくるが
それは影のようなもの
本体は
ずっと
ふきだまって
残っていく
そのことが許せない
つらいのだが
人間はあの滝壺ではないのだと思う

そう思うと
なぜか慰められる
気持ちが落ち着く
でもずっと心は汚くなり続けていく……



自由詩 滝壺 Copyright 新人さん 2017-05-16 20:07:54
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