白と震え
木立 悟






静かすぎる昼 脳の鼓動
まどろみを吸う
冷たい蝶
左目と左手にはばたいている


斜めに巨きく横たわり
街を隠す羽があり
明るく淡く 数え切れぬまま
ただ風ばかりを打ち寄せている


森のなかに
骨はつづく
光は白く
骨を消してゆく


捨てられた時計の山があり
秒針だけが動いている
起伏は径に現われては消え
荒れ野の入口までつづいてゆく


地平の滲み
極光の舌
冬の嵐の痕にゆらめく
何処へも行けない紙の象の群れ


蝶は肉の内に沈み
静かに交尾を繰り返し
半身はずっと冬のまま
降りつもる風にさざめいている





























自由詩 白と震え Copyright 木立 悟 2017-05-12 08:30:55
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