箱庭
卯月とわ子

意味のない涙が
また頬に道を作った

定点カメラで観測する貴方の庭は
わたしに季節を教えてくれる唯一のもので
若葉が鮮やかに揺れている
太陽に向かって咲く花は
目に沁みるほどに黄色い

もうすぐおやつの時間ね
時間に正確なメイドがわたしに差し出すクッキーは
いつも同じ物
曜日によって変わる飲み物が
私のカレンダーで
確か今日はアッサムの金曜日

夜が来るまでにすることは6つ
ベッドに横になるまでにすることは3つ
合計9つの仕事がわたしの生きる意味

涙を流すことは仕事に含まれていないわ
意味のないことをするなんて勿体ない
定点カメラはずっと前から壊れているの
だってもうずっと同じ色彩ばかり
夜というより闇というべきものがやってくる前に
わたしは目を閉じなければ

誰かがわたしの手を引っ張るの
それは夢よ
だっていつもベッドの中だもの
この部屋にはわたししか入れない
誰かが囁くなんて嘘よ
早く目を閉じて耳を塞いで
正しい夢が彼方からやって来るのを待つの

午前零時の舞踏会の相手はいつも貴方
わたしの手を引っ張るのも囁くのも
それは貴方の仕業
でもそれも夢よ
だってこの部屋にはわたししか入れない


自由詩 箱庭 Copyright 卯月とわ子 2017-05-05 14:35:55
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