初心者のための赤
卯月とわ子

赤いボールペンばかりインクがなくなっていく
これでもう4回目の買い物
忘れない様に赤のインクを握りしめてレジへ
研修中のお嬢さんは
奇妙な顔をして作業をこなす

3つパックのプリンと無糖のヨーグルト
そして赤のインク
あの人の好物とわたしのおやつ
添削のための赤いインク

あの人の言葉はどんな教師のものよりわたしに刺さる
ひどく素直になって
二人だけの授業に参加するのだ
教科書なんていらない
春の午後の気だるいひと時
欠伸をかみ殺す必要もないほどの
濃密な時間は
気まぐれにやって来て
気まぐれに帰っていく

さあノートを開こう
鉛筆の黒の上を走る赤は
今日もわたしを導く


自由詩 初心者のための赤 Copyright 卯月とわ子 2017-05-03 15:10:05
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