紙の鳥
木立 悟





大陸より大きな曇が
森のなかの
ただひとつ倒れた樹を見つめる
川に映る 自身を見つめる


横切る音が雨になり
小さなものを剥がす音が光になる
誰もいない国を過ぎる時
曇は小さな指を見た気がした


背中を支点に揺れる風景
原を分ける人工の風
朝の夢がよみがえる昼
高く高く 何も無い昼


理由もわからず
枯れた草の円
暮れのかたちが
火のように痛い


折り方を間違えて
羽の多い紙の鳥が
暗がりの川を流れゆく
細く長い 青と白の傷


誰もいない国
灰色の道 大粒の雨
棄てられた光の矢のはざま
曇は声を聞いた気がした



















自由詩 紙の鳥 Copyright 木立 悟 2017-04-10 14:11:00
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