REINCARNATION
本木はじめ
塔というひとつの崩れるあこがれや空へと伸ばした腕の傷痕
傷つけて傷つけられて庭先で裸足のままで梅の香を嗅ぐ
濁流に映りしきみの微笑みか重たき日々の波のきらめき
階段の日陰にぼくは座り込み陽だまりみたいなきみを見ている
もう何も間に合わないね何もかもかさぶたみたいに剥がされてゆく
三月の廃車置き場に原色のチューリップ一輪わすれたぼくら
狭い檻に閉じ込められてぬるぬると蛇へと変わりしきみと死す春
ロウソクを白い炎と仮定して新しきものひとつ消えゆく
雷鳴やまばたくように点滅す黒はおもいで白はげんざい
かたちから逃れられない者たちの背後にたたずむ無言の道化
伝えようとすればするほどこぼれゆく水の音だけ響く校廊
終着駅此処から咲きはじめるはずの真っ赤な花の種のはだいろ
眠れない夜に扉を開けつづけ巨大な蚕にあいさつをした
意識とか無意識だとか沈黙よおまえはいつまで無言のままか
欠けてゆく世界の一部としての春さくらのはなびらひろいあつめて
明日から覗かれている毎日よ思い出みたいに美しく去れ