週の半ば頃
ヒヤシンス


 銀色の雨が音もなく降っている。
 テラス越しに見る常緑樹の緑は鮮やかで、
 一日の予感は謎めいている。
 
 雲に覆われた空は以前読んだロシア文学のようだ。
 テラスに置かれた二脚の白い椅子はフランス文学。
 放たれた葉巻の煙はさしずめアメリカ文学か。

 窓から聞こえる誰かのハミングに耳を澄ますと
 夢見がちな午後が頭をもたげる。
 予感が現実に変わる瞬間の虚しさは散る桜のようだ。

 予感は予感のままでいい。
 生は死に向かってゆくが、死は謎のままがいい。
 
 今日も私は生きている。
 死は知らない。

 謎は謎のままでいい。
 我が道程を通り過ぎる度に今日は死んでゆく。
 それでいいのだ。
 しとしと降る雨にぼんやりと考える木曜の午後。


自由詩 週の半ば頃 Copyright ヒヤシンス 2017-03-18 03:09:19
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