微笑み
Lucy
このメールを打ちながら
ほんの少しあなたは微笑んだのだろう
ありふれたジョークのような
たった二行から
一滴零れた微笑みが
ザクザクの雪解け道をよろけながら歩いていた私の
胸の底にぽたりと落ちて
じわりと皮膚にしみ込んだ
一瞬の温かさが
遠い稲妻のように閃いて
珍しいね
笑うなんて
それがこんなに
温かいなんて
あなたが笑ってくれないから
一緒に居るのが苦痛で
聞いてくれないから話すのも嫌になり
会話も辛くて
気配さえもが憂鬱で
距離を置こう
物理的にも心理的にもなるべく離れ
関わりを避けて
表情 しぐさ
声のトーンに
一喜一憂するのをやめて
私は私
自立して
マイペースで
無関係で
会話は必要最小限度
干渉はしない
依存もやめる
頷いてくれなくても
共感してくれなくても
怒った顔していようが
無視されようが
動じない
そしてようやく気にしないで
近くにいても平常心で過ごせるように
いつから扉を閉ざしたのだろう
笑わなくなったのは 私から
話さなくなったのも
共感しなくなったのも
あなたがそうなるそのもっと前から
とても近くて
遠い鏡のような月
私の胸の奥の古びた板戸の隙間から
夜更けに一筋差し込んだ
細い光のような微笑み