憎悪の国
matirius

この憎悪をいつまで
胸に抱けばいいのか
誰にも告げず
命の尽きるまで?
この憎悪を収めるには
人ひとりの胸はあまりに
小さく、脆い
絶えずそこから漏れ出そうとする
この憎悪を私は押しとどめる

肩が触れるほど近くに隣人がいる
この雲霞のような群衆のうちに
私は嵌め込まれている
明けても暮れても領土を小競り合い
それだけで人生が埋まりそうだ
いまにも押し負けそうなのに
しぶとく立ち続ける
この乾涸びた冊が
私の実体だ

見よ、憎悪の火が燃え移っていく
私から漏れ出たのか
私へ飛び火したのか
叫び出してしまいたい
焦土が喉を塞ぐ前に
走り出してしまいたい
そうしてぶつかる限りの隣人に
火を継ぎ穂する
憎悪の駆る、一頭の馬になりたい

業火の中に苦しみ叫ぶか
火の手を怖れて震えるか
燻りやがて炭となるか
我々はじつに
地獄にくべられた薪だ
だがこの火が
我々を呑み込むこの火のみが
我々の生命と真理で
火なくして我々は、冷たい骸だ


自由詩 憎悪の国 Copyright matirius 2017-03-15 01:51:22
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