ひぐらしの月
凛々椿

少しお酒に酔って
日も暮れて
ちょっぴりいい気分で天を降りあおいでみたら
月がたくさんありました
ああ、月だ
と思うとそれは
家庭の明かりに姿を変えます
狭い路地の
ひしめくマンションの上層階は
月の明るさのようでした
まあるく静かな
きれいなひかりたちです
あのひかりからは今ごろおいしい匂いとか
笑い合う声とか
ちいさな小競り合いとか
しているのかな
ひとつひとつの月明かりが
とても羨ましくて
妬ましくて

ちなみに本物の月は
真上にありました
うんと首を反らして見つけた月は欠けていて
滲んでいて
それでも美しく
でも
どのひかりとも違わぬひかりでした


自由詩 ひぐらしの月 Copyright 凛々椿 2017-03-09 21:47:56
notebook Home 戻る  過去