18回目の春
印あかり

空が3つあればね
1つくらい駄目でも構わないけど

音楽室は雨のコーラス
トライアングルを鳴らすと
乳頭があまく痺れた

先生はしょうのうの臭いがした
深くおじぎをするとポケット越しのナプキンに触れた
また来年がんばれよ、という言葉の後ろにみえた桜の木
あれに火をつけてもね
1つめの空がほら、駄目だから

舌でウニをとろかす
お母さんの目の下のくまを
ポチが嬉しそうになめる
リビングの隅に置きっぱなしのサックス
このまま化石になるサックス
雨が窓を殴っている

死にたいとか簡単にいわない
どこに行っても屋上がない
だからわたしは2つめの空もしらないでいる

ヴィヴァルディが歌いだすころ
雀たちが微笑みあうんだ

わたしの肉は白くてあまくて
今もびっしょり濡れている


自由詩 18回目の春 Copyright 印あかり 2017-03-09 21:31:05
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