ツノゼミ(百蟲譜3)
佐々宝砂

見た目はパッとしない。
目立たない。群れない。
硬そうにみえてそうでもない。
脆いかというとそうでもない。

灰だか茶だか緑だか色曖昧な身体には
何のためだかツノがある。
これがまた雄同士の争いにさえ
役立ちそうにないツノで。

ときたまぴしっと跳ねてみせる。
それがいやにきっぱりしている。
どこに行ったんだろうと思うと
いつのまにか手の届かない遠くにいる。

私はこういう手合いが好きだ。
あくまで虫の話である。



(未完詩集『百蟲譜』より)


自由詩 ツノゼミ(百蟲譜3) Copyright 佐々宝砂 2003-11-15 01:46:43
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