渡り鳥
小川 葉



渡り鳥が旅立つ
渡り鳥の目の中で
僕は故郷を目指す
故郷などもうないのに

日が暮れる
眼下の家々に明かりが灯る
かつて僕の家だったあたりも
他人のように冷たく光っている
だから僕は渡り鳥の目の中で
ここではない故郷を目指す

朝が訪れる頃
渡り鳥は水辺で羽を休める
しばらくここが故郷になる
知らない言葉の人たちが
渡り鳥を見ている
渡り鳥の目の中で
僕は知らない言葉を聞く

意味はわからない
ここがどこなのかもわからない
だからこのまま
どこまでも行けそうな気がした

季節が変われば
渡り鳥はふたたび旅立つことだろう
渡り鳥は新しい故郷を目指す
その目の中で
僕も飛び続けるのだ



自由詩 渡り鳥 Copyright 小川 葉 2017-02-28 21:05:01
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