それが旅立ちなら
ベンジャミン

張りつめた風の端
やわらかい記憶の糸をほどけば
泣いてしまうかもしれない
あなたは

ほころぶ桜の薄い花びら
その散り際の光景を思い浮かべるとき
過ぎた時を惜しむ眼差しで
未来を見つめる

何かを約束することで
つなぎ止めているいろいろを
堅く結んだ口元が
不意に呟いた

別れは足音もなく通り過ぎる
押されて踏み出した他の道には
やがて待っている別の
さよなら

その度に知る失うことの意味を
何度も受け止めきれずにこぼしても
また

巡ってくる
ゆっくりと引かれてゆく糸は
輪になるために角をけずって
空白をつなげようと

あなたを

出会いに導く


その頃
別の花びらが静かに枝を離れ落ちても










自由詩 それが旅立ちなら Copyright ベンジャミン 2005-03-07 16:33:51
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