マシュマロ
そらの珊瑚

春のほどけぐあいが
足早にすすむころ
キミに会えるだろうか

冬はなにかしら
とんがっているから
(雪が積もった日は別として)
たとえば吸い込んだ空気の凍った針が
肺に刺さるんだという理由で
キミは不在だった
けれど
ほんとうに怖れていたのは
別に在った気がする

世界は鋭角があふれていて
うっかり触れれば
切れた指先から
致命傷には届かないほどの血が流れだす

それは
季節が変わったって
変わらないもの
そうわかっているけれど
昨晩みた夢の中で
キミの顔があんまり鮮やか過ぎたんだ
現実が過ぎていくだけのメレンゲに似た幻だとしたら
幻こそが溶けることのない現実なのかもしれない

陽射しに撫でられた
薄氷のかけらと痛みは
やがてやわらかい水に同化し
キミが望むなら
飲むことだってできるだろう
そのために扉を開け
厳重にかけたマスクをはずしキミは春の酸素を
吸う
更新する
隅々までふくらんだ肺は果実のように
そうして
出来たての白いマシュマロみたいに僕らは再会する


人も
マシュマロも
この星のなんピースかは
そんな水から成り立っている
泳ぐにはまだ早いけれどね




自由詩 マシュマロ Copyright そらの珊瑚 2017-02-24 08:35:57
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