穴男
やまうちあつし

腹のあたりに
ぽっかりと穴
医学的な話ではない
かといって心の中とか
そういったロマンチックな歳でもない
実際に腹のあたりに
バレーボール大の穴が開いたのだ
妻や子どもはよろこんだ
その方があなたらしいと
いたくはないが
見たくもない
時折
鳥が通り抜けてやかましいのと
風が吹き抜けてこそばゆいだけ
時間が解決するだろう
自然と穴がふさがるか
ふさがらなくても気にしなくなるか
どちらでも同じこと
わたしは毎日
ぽっかり穴を開けたまま出勤し
ぽっかり穴を開けたまま帰宅する
穴からむこうを覗いたら
朝日や夕日が鮮やかに見えるそう
通行人の話によれば
太陽に誰かの顔が
浮かんで見えるということだ


自由詩 穴男 Copyright やまうちあつし 2017-02-21 14:21:56
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