東京ベイブルース
梅昆布茶

漆黒の海に救済の錨を深く沈めたまま
誰の叫びも届かない街と交信しあう星々を眺めている夜

詠み人知らずの歌が都市の残照を吸い込んで
無数に浮遊している昏い海面に海月となって漂う

東京湾を跨ぐ巨大な吊り橋は光の羽根を拡げて
宇宙への定刻どうりの発着ができない哀しみを

お台場のコンビニ店員の奇妙で素敵な彼女と
無駄口を投げ合って仕事はすすむ

チャイニーズだけれどとっても粋なラーメン店の
おにいさんは福建省の国には帰らなくて
でも13年日本に暮らしているがもうそろそろ転職を考えている

品川のネパール店員とベトナム店員もちょっと馴染みだが
すべてを包摂した夜はただしめやかに歩く淑女のように

夜は遠くちかい
言葉は甘くせつなく憂いを含んで
いつも裏切られ続ける恋人たち

臨海工業地帯のパイプライン
夜釣りの安藤さんが大好きな場所を
邪魔しない様に車を停める

誰からも着信しない真夜中
都市と星がまばたく

もう痛んでしまったセロリを齧る度に
宇宙と星々はちょっとだけ震えて
粗雑で繊細な夜をケンタウロスが疾る


















自由詩 東京ベイブルース Copyright 梅昆布茶 2017-02-15 20:15:45縦
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