雪のひとびと
印あかり

私達はきょうも鳥の首を絞めて
お釈迦様を雑巾でぬぐっている


星は一面凍りついてしまって
月の香りがしないと鼻をすする


ころっと犬の彫刻が転がって
心臓をノミで打たれた感じ


海老が暗闇のなかで跳ねた
中華包丁はしずかに錆びている


受験生の群れからのびた
タールみたいな影がぬるっとのびた


草原に天使の影が落ちている
あばら骨の隙間が痛んでしかたない


鱗がぽろぽろ剥がれた金魚が
とろりと溶けて水槽はスノードーム


母の肘はカレーで汚れていたけど
殴られたくないから黙って食べた


ミカン・リンゴって看板をどちらも
赤で描いてるから潰れたんだろうな


自由詩 雪のひとびと Copyright 印あかり 2017-02-12 15:31:01
notebook Home