蜘蛛の手
塚本一期
下着に着替えて写真を撮った
下着の意味をなさない下着に着替えて
いてはいけない 遠い 遠くの
ぼくの大事にしている恋
人の ため
に
きみがいると 発作が起きない
きみは月に一回にたくさんもらえる
お薬みたいに よりも 効き目があって
ぼくは死にたいなんて
言わなくてすむ
ようになるからさ
きみが裸になれと言えば
ぼくは裸にだってなったさ
ぼくは自分を責める言葉をさがしたけど
見つからなかったんだ
ほんとうに 人間が
意地悪なだけ
だった
病気のせいにもしようとしたんだが
果たして病気が病気なのかすらももう
わからなくなって
しまったんだねもう
誰が病気で誰が病気でないのかもわからなくなったけど
きみ
きみだけは
健全だって
ぼくは
信じれた
信じれていたし、信じれていたし
ぼくはひん曲がっていたって
あのおばちゃんたちの渦の中
侮蔑と嘲笑の視線の剣が刺さるぼくの眼球に
上を見ると映ったのは
光の中からまっすぐに下りてくる蜘蛛の糸のような
きみの声
「おまえは、ダメなやつなんかじゃない」
ああ、カート、ごめん
ぼくも、カッコよく
自己嫌悪の中にいたいとおもっていた けど
光の中に抱かれて いたいんだ
意地悪なやつらは嫌い だよね?
ぼくあんな風に、なりたかないよ
生きられなくなるのに それでも
それでもやっぱり
なりたかないや