「瀧口修造-夢の漂流物」展のススメ
青色銀河団

世田谷は砧公園のなかにある世田谷美術館で現在「瀧口修造-夢の漂流物」展が開催されています(4月10日まで・月曜休館)。昨日の深夜(今日の早朝というべきか)テレビで紹介されていたので早速観てきました。
詩人でもある美術評論家の瀧口修造氏が生前親交のあった内外の現代芸術家から贈呈された作品を中心に展示してあるのですが、これが予想以上に良かったので感想を書いてみました。
主な出品作家はマルセル・デュシャン、マン・レイ、ジョアン・ミロ、サム・フランシス、ジャスパー・ジョーンズ、イヴ・タンギー、荒川修作、河原温、岡崎和郎、池田龍雄、加納光於、中西夏之、赤瀬川原平、草間彌生、合田佐和子、北代省三、武満徹(初めて知った人も何人もいましたが)といった60年代70年代の前衛芸術を代表する錚々たるメンバーで、涎を垂らさんばかりに2時間くらいかけてじっくり観てきました。テレビではごく一部しか紹介されていなかったのであまり期待しないで行ったのですが、これで入場料800円はほんとお得だと思います。

展示の内容ではちゃんとした作品もさることながら、何と言っても様々な作家が私的に瀧口氏個人にプレゼントしたオブジェの小品のすばらしいこと!10cmに満たないオブジェが多数展示してありそれが世界に二つとない手作りの(まあ作品も手作りである点では変らないのですが)たぶん作家が肩肘張らず自らも楽しんで作ったであろう小品がものすごくよかった。「ああこれもって帰りたい」と強く惹かれるのが何点もありました。こういうものに囲まれていた瀧口氏はなんて幸せなんだろうって思いました。

実は私は瀧口修造ってちらっとしか知らなかったんですが、アンドレ・ブルトンに端を発する超現実主義を戦前から日本に紹介した人で(っていう解釈であってるかな?)、自身もそういった作風の詩を書いています。現在から見ると多少古さを感じますが、その詩がジョアン・ミロとの合作に書かれていたり、はたまた平沢淑子が小さな硝子の本に刻印したりと様々な作家とのコラボレーション作品が多数ありました。
これが現在ありがちな詩と他の媒体を合わせてみましたのと全然違って本当にひとつの作品として融合していてとてもすばらしい。この時代は詩が他の芸術と融合していた稀有な幸福な時期だったんだろうって思いました。
もともと私は東京都現代美術館等で知った60年代の前衛美術がその後の80年代90年代と比べてもっと世紀末的で芸術自体にものすごくパワーがあるので好きだったんですが、そういう混沌とした時代だったからこそ詩もほかの芸術と今よりもっと近かったのかなと思いました。

10年位前に韓国の現代芸術展を見に行ったとき、そういうパワーを期待したことがあったのですが、現在の日本の芸術のように変に洗練されすぎていてがっかりしたことがありました。情報通信技術が発達した現代では、全世界が同時代的に進行していてある意味でつまらない時代に私たちは生きているのかも知れないなと思います。

いずれにしても美術が好きな人も詩人も詩を好きな人も一度は見に行って損は無いと思う企画展です。芸術を私的に楽しむこういう楽しみ方もあったんだと気づかされます。是非ともおススメします。

世田谷美術館 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/index.html


散文(批評随筆小説等) 「瀧口修造-夢の漂流物」展のススメ Copyright 青色銀河団 2005-03-06 19:00:25
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