末松 努

先細りを予告する山道へ分け入る
このまま進むと人生すら終わるかもしれぬというのに
愛車のアクセルは
足がペダルから離れるのを許さなかった

だから言っただろう
変わらないって

助手席からの非難は
よりいっそう避難を遠ざけた
頑なに握ったステアリングに
彼の命も預けさせる

付き合わせて
悪かったな

そんなつもりがなかったといえば嘘になるが
その嘘に付き合ってくれと祈ったのは真実だ
否、この世に真実などないのだから
どのみち嘘になる

行くところまで行けよ
もう引き返せないだろ

それも嘘だとわかった
引き返そうと思えばいつでも引き返せる
本音に反してこの道を行くのも
嘘から出た誠だ

失敗は成功の
はは、という

ハハッ
自分で言ったあとで苦笑する
たった一度の失敗がこの世の終わりと
学校で教え込まれたくせに

答えはひとつだ
この道しかない

そう
答えは四つの選択肢から選んで
マークシートに鉛筆で書き込む
外れれば落ちるだけだ


自由詩Copyright 末松 努 2017-01-26 22:16:47
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