荷ほどき
青の群れ
グッドラック、発したことない言葉
語感のよさだけが残る
旅立つ日の特別な高揚感は
からんだ糸をほぐす
まだカーテンのない部屋
白い靴下の大きな男たちが運び込んでいくダンボール
馴染んだ匂いのする荷物たちよ
フレーミングをばらばらに
光差し込む窓辺はあたたかい陽、雨樋に雪が残っていた
出入りを繰り返す白い午後
滴る水滴がつむじに落ちて
身震いをしたのを笑う人はいない
運んですぐの冷蔵庫は電源をいれてはいけないと言われました
ふいに増す光
大きな物音のあとの静寂
自販機で買ったミルクティーは温く
空気にさらされて冷えてしまった指先
誰も帰りを待たない部屋の
息を短く吐き出した
引いて、開けて、取り出して、繰り返す
酸素、二酸化炭素、強く結んだ紐をほどいていく
解剖のように中身が見える
はるか遠く、かつて馴染んだ匂いが解けて
やさしい不安が押し寄せても