よぎる
末下りょう


スツールに置いたスタンドライトの明かりが
薄い紙を透かして
褪せた文字を
一ページさきに触れた指の影に落とす

あてどもなくゆれ 、よぎる
ライオンの夢



眠りが獲物と結ばれるときを契機に 、
新しい動物の血潮が
海を揺りおこす

大粒の水飛沫のなか
うちふるえる尾びれの破壊的な手応えを
逃がさずたもつことに
寄り添うと

落ち着きなく壁際に
たまる光 、
美しい背骨のほかになにも残らなかったとしても
この夜のつめたい踵をそれにあてて
ページをめくる 
火にかけたケトルが鳴りだす


風のなか
砂浜におりてくる
金色のライオンたちの夢がよぎる



自由詩 よぎる Copyright 末下りょう 2017-01-16 00:19:40
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