ポリリズム
小林螢太

ジンジャーエールの
薄いこがね色に光る泡を
優しく、かき混ぜ、溶けるように
わたしの過ぎた惑いを
散らしていった



冬の早朝に舞い降りる霜のビロードで
肌のヒリヒリする感触が
心地よい

胸の中の廃園で息づいている
捉えることのできない
曖昧で、あやふやなものが
初春の息吹を感じて
騒めいている



よろこびも、かなしみも
時がたてば
それほどでもなくて
耳の奥に響いているものは
夜明けの窓をたたく
雨の
複数の異なるリズムだけ



ゆっくりと
わたしから失われていく
繰り返された、きせつの記憶
巡り、交差し、そしてループする
いくつもの風景

遠く、ブランコがかすかに揺れて
気が付けば、いつの間にか
少年の私が
空を見上げている




自由詩 ポリリズム Copyright 小林螢太 2017-01-09 13:25:24
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