満月の物語Ⅱ
星丘涙

ビルの谷間に 転がるように のぼる満月
ひとりきり ひとりきり 旅するうちに
道を間違え 失った夢の数々
 
真夜中の 交差点を すれ違う人の群れ
嘘つき女が 札束を数えるエレベーター
拒食症気味の都会の黒豹が笑う

満月の物語は 古から 古へ
今夜 教えてあげる 満月の物語

闇の彼方で 苦笑いしながら 浮かぶ満月
夢から覚めた 誇大妄想家のなれの果て
役に立たないリハビリテーションとカウンセラー

狂喜と喜劇は 裏と表だから たぶん大丈夫
無知なクールビューティーの群れ
恋する女に誘われ 悲劇的な結末

満月の物語は 今宵も生れ落ちる
今夜 教えてあげる 満月の物語

凍りついた 叫び響かせ 堕ちる満月
サジを投げられた病人の 奇跡的な癒し
教えてあげるよ 「お金の稼ぎ方を」と叫ぶ宗教家

仏の顔が三度までなら あなたの顏は何度まで
歓喜の声を上げて叫ぶ 悪霊付きの様な脳内革命
独り上手でニューコークで 野たれ死にしそう

満月の物語は 創世記一章から始まった
今夜 夢ひと夜 詠んでみて
満月の物語は 今宵も更新される


自由詩 満月の物語Ⅱ Copyright 星丘涙 2017-01-08 18:17:26
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