仮面
星丘涙

水面に映る醜い顔を見つめ何時も悩んでいた

月夜の晩は表情のない仮面を被り

彼女と踊る

カミングアウトできない素顔に悩み続け

今夜もその顔をひた隠し踊る

しなやかさも体の切れも奪うコンプレックス

でも彼女は彼の苦悩を知っていた

全てを知って彼を愛していた

仮面を捨てたら生き生きした表情が得られるのに

それができないでいた

月夜の晩に城壁に上り彼女は彼に囁いた

「素顔が見たいの」 そしてそっと口づけた

その瞬間 仮面が剥がれ落ち

彼の顔の傷は奇麗に癒やされた

その晩二人はいつまでも軽やかに踊っていた

割れた仮面が床に落ちていた


自由詩 仮面 Copyright 星丘涙 2016-12-29 15:34:55
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