白日夢
レタス

青い猫を撫で
煮干しをひとつやった
彼はゴロゴロと喉を鳴らし
ぼくを猫の都に連れて行くという

彼は人では駄目だから
何かを被れという
ぼくは夏祭りに買った狐のお面を
こめかみにステンレスのボルトをねじ込ませ
青猫についていった

何処からか
チクタク  チクタク と
時計の秒針が
ぼくを歩かせる

青猫が時折振り返り
ニャァと鳴く
ぼくは忘れ物に気付いた
煮干しの袋だ
猫の都のお土産を忘れてしまったのだ
今更ひき返すことができなくて
コンビニで鮭とばを沢山買い
都へ赴いた

青猫はあちらこちらを彷徨うように
ぼくを誘う
そしてぼくは帰り道を失い
いつの間にか
都に着いてしまったのだ

猫の都で狐のお面は笑いと喝采を受け
三毛やサバトラ
茶トラ、ぶち猫に鮭とばを振る舞い
壮絶な歓待を受け
青猫の案内のままに歩んで往くと
そこは都の御所だった

青猫は慇懃にゴロゴロと喉を鳴らすと
御簾の向こうで丸々とした黒猫の帝が
ぼくを珍しそうに眺めている

よくよく見れば
帝はうちの黒ちゃんじゃぁないか
鮭とばを投げると
にゃ~んと飛びつき
普通に太った黒猫に戻ってしまった
其処は御所でも何でもなく
うちのリビングだった





自由詩 白日夢 Copyright レタス 2016-12-28 23:25:53
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