ハーモニカ
天野茂典

 


    眼帯をしている目医者彼岸花しおれるところを花鋏で切る

   いつまでも鳴らぬ時計よ深夜ふと台所で君に話しかけたかった

   オレンジをできれば本屋の中央に置けばいつかは爆発するか

   風のなかカヌーを一艘浮かばせてちょうちん鮟鱇そのあとにつけ

   公園の機関車深夜に走りだす止まっていることに疲れちまって

   壜の鳴る鬼灯市ほおずきいちよいっせいに砕けてしまえ沈黙と測りあえるほど
     
   あかがねの腐食してゆくさま眺めてる間にドン=キホーテよ
   汝は死せり
  
   海蛍ひかるそのとき赤貝のひとつの神話メールでつないで

   眼帯をしている目医者彼岸花切り落としたあと静脈ほどく

   肌襦袢着ている少女しなやかな柳のように毬をついてる





短歌 ハーモニカ Copyright 天野茂典 2005-03-04 19:28:40縦
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